求人広告会社で企業の採用をお手伝いする中で、 大企業から中小企業まで色々な会社を見てきました。
また、僕自身も新卒で入った安定企業を辞めて中小企業へ転職した一人です。
それらの経験から中小企業には大企業にない良さがあるとわかった。
少なくとも、個人的には中小企業の方が肌に合っています。転職してから仕事の楽しさが2倍に増したからです。
大きな組織で安定した環境に会う人もいれば、自分のようにそうでない人もいる。
自分にあった企業で働けると幸せですね。
そこで今回は、自分の体験と知見をベースにして中小企業で働くメリット・デメリットを、大企業との比較を交えながら説明します。
中小企業への転職・就職を検討中の方に参考になるようにまとめます。
中小企業のメリット10
1.やりたい仕事につける
自分が欲しい職能・スキルを狙って得たいなら中小企業で働くべきです。
大企業の場合、採用後に実際に配属されるまで希望の職種につけるかわかりません。
「総合職」の採用だと、よりこの傾向は強く、営業がやりたくて入社しても、配属は顧客サポートというよくわからない部署なんてこともよくある話です。
さらに、営業になれたとしても、まったく興味の持てない商材を扱うことになったりすることもある。
企業規模が大きい故に部署の数・扱う商材の数も多いのが原因。
中小企業は、職種での採用が中心。希望と違う仕事がメインになることはほとんどない。既存の業務に別業務がプラスっていうのはよくあるけど。
企業ごとに事業も明確なため、入社前にはまったく予想していなかった仕事をすることにはなりにくいため、モチベーションを保ちやすい。
2.個人の裁量・工夫の余地が大きい
社内のルールが大企業ほどガチガチに固められていないため、自分で判断して自分で動ける余地があります。
僕は営業するとき、会社のシステムから企業データを落として、自分でネット上から集めたデータと合体してGooglemapに取り込み、スマホのmapに企業データを表示させたものを見ながら活動をしていました。
で、これは上司に知られたとき、「会社のデータをスマホで外に持ち出すなんてダメだ!」(おっしゃる通りです。)といわれて一旦は使えなくなりましたが、誰がみても効率的だったので、会社用の情報保護処理が施されたタブレットが配られ、その端末でならOKということになりました。
自分の工夫が会社の営業ルールにまで影響を与えたのは、ちょっと嬉しかった。
もし会社の企業データの管理ルールがガチガチだと試すこともできませんでした。
また、広告商品の無料サービスを拡大解釈して、得意先企業に提供し、新しい契約に繋げることもよくやっていましたが、これも一人の上司に納得してもらうだけだったので、実行できたことでした。
これが、何人も決定権に関わる人がいる環境だと、どこかで「ダメ!」となり、自由には動けなかったはずです。
こんなケースがたくさんあります。大きな組織で働いた後だと、この良い意味での隙のありがたさを非常に感じました。
中小企業は、色々なルール・制度が大企業ほど整っていない分、自分で考え工夫を施す空白が多くあります。
3.幅広い業務に携われる
社員数が多くないため、一人で色々な業務を兼務するケースが多くなります。
大企業は人事専任がいますが、中小企業ではありえない。一番、忙しい人が人事担当であるケースが多かった。
大企業は、全業務が分割され、作業の範囲も細かく規定されています。
その一方、中小企業では、社員一人が担う守備範囲が広くなる傾向がある。
僕も求人の営業だけでなくインタビュー・イベント準備・媒体の配送準備・集金なんかも行っていました。そして、これらが非常に良い経験でした。
多くの業務を横断すると全体の繋がりが見えるようになり、会社の動きを一つ高い視点から捉えられるようになります。
短期間で色々と経験できるため、幅広いスキルも身につきます。
4.社内業務が少ない
社内向けの業務が苦手な僕はとてもありがたかった。会社を動かすために、必要なものだとわかっていても、「鬱陶しいな」と思ってしまうんですよね・・・
社内業務は、規模の大きな会社ほど増える傾向があります。そのため、大企業に比べて中小企業の社内業務はそれほど多くありませんし、厳密でもありません。
あるにはありますよ。でも、無駄な報告用の資料を作って数時間潰すようなことは少なくなりました。
僕がいた会社では、成果が上がっていれば日報を出さなくてもとくに何も言われませんでした。この緩さが好きでした。
大企業ほど体力のない中小企業は、社内向けの仕事より社外で仕事を取ってくることの方が大切です。
社内業務で社員の時間を奪いすぎると会社が傾くので、社内業務が増えすぎる体質になりにくいのだと思います。
5.自分の努力・成果が会社の成長に反映する
売上数千億円規模の会社で成果を出しても、会社自体には1%の影響も与えません。
しかし、数億円〜数十億円規模の中小では個人の活躍で数%売上が伸びることもある。
中小企業で大口の取引を3件から6件に増やせば、会社の売上が数割上がることになったりもしますから。
自分の成果が、そのまま会社の成長に直結する環境があります。
6.出世がしやすく、早く場数が踏める
社員が少ない分、出世も早くなります。大企業で3年目は、まだ一人前未満の扱いでも、中小企業で一人前以上の仕事を任されることもある時期です。
ITベンチャー系は、とくに早い傾向があり、入社3年目でプロジェクトを管理をする立場になっている人もいました。
たとえば、同じ能力のAくんとBくんがいて、Aくんは大企業、Bくんは中小企業に就職したとします。3年後に大企業のAくんはやっと一人前の仕事を任されるようになる一方で、Bくんは部下を持ち、自分の裁量でマネジメントを行うようになっているという程にスピードが違う。
また、Aくんが自分の裁量でマネジメントを行える立場に立つには、優秀な同期たちとの競争に勝たなければいけません。
しかも、それは「評価されあい」の勝負であり、上司と馬が合わないなどの実力以外の要素で負けて実践の場に立てなかったりもする。
中小企業だと一生懸命やればバンバン仕事を任されます。同期との競争も大企業に比べてかなり緩いため、早いうちから多くの場数を踏む経験ができます。
7.意思決定が早い
大企業と比較すると中小企業の方が意思決定が迅速で動きが早いです。
指揮系統がシンプルでトップの舵取りでガンガン新しい事を仕掛けていく会社がたくさんあります。
地場の求人広告会社で働いていたときも、毎月新しい試みが行われる環境でした。「積極的な会社だなー」と思っていたら、その後に転職したIT企業は、2日に1回くらいの頻度で新しい試みがあったり、オペレーションが改善されたりしていました。
しかも、その中心が30歳前後の人たちだったのをみて、「あ、動きの遅い古い会社は、若い会社に全部食われるわ」と本当に思いました。
ネット社会が進んでビジネスのスピードが上がり、衰退期に突入する日本では変化に対応できる会社しか生き残れないと言われていますね。
意思決定が早い会社で揉まれた方が、これからの時代を生き抜く力は身につきやすいと思います。
8.人間関係が楽(会社によって違いあり)
いい中小企業は、大企業に比べて人間関係の負担が少ないです。
マズローの欲求5段階説をご存知でしょうか。人間は低次の欲求が満たされるに連れて、より高次な欲求を求めるという心理学の理論です。
大企業だと3階層までは余裕で満たされちゃうんですよね。そうなると、第4の承認欲求が高まって、社員同士で争う。
これが大企業に、風通しが悪く、人間関係が最悪な部署がある理由の一つだと認識しています。
中小企業には、大企業で考えられないほど人間関係が平和なところがあります。足の引っ張りありや変な縄張り争いがないのが、大きな要因の一つです。
年功序列バリバリの大企業では上司の機嫌を取ることも大切なので、気を使うことも多くありますが、中途入社が多い中小ではそのへんも薄い。
僕が働いていた求人広告会社も人間関係がめちゃくちゃ楽でした。頻繁に飲みにいくほどベタベタしないけど、仲が悪いわけでもなくという、ちょうどいい距離感。
9.経営陣と距離が近い
大企業だと経営陣が決めたことを頑張るだけとなりがちですが、中小企業だと経営陣の顔が見えて距離が近いため、何をどう考えて判断しているのか見えてきます。
大企業で上が決めた仕事・決められた範囲の中の仕事だけをこなした結果、業績が上下しようが、「まあ、決めたの自分じゃないしな。」と、どこか他人ごとのように感じるようにになる人は多い。
しかし、経営陣と距離が近く、直接話す機会も多い中小企業だと何で悩み、何が問題で、どう決断したのかがわかってきます。
自分ごととして考えると仕事への意識も高くなる。
10.出身地・地元に本社がある
大企業の本社は東京などの大都市に集中しています。さらに、全国に拠点がある場合、転勤は割けられないでしょう。
しかし、中小企業なら地元や出身地に本社がある企業で働く事ができる。
希望の勤務地で転勤なく働けるということは、人によってはとても大きなメリットなのではないでしょうか。
中小企業のデメリット5
1.福利厚生が乏しい
福利厚生や待遇面は、大企業に劣ります。
大企業の福利厚生は、企業が成長する過程の中で整備・拡充されてきた制度であるため、中小企業に比べて質・量ともに非常に高い。
中小企業では見ないような色々な手当がつくことがあります。
しかし、中小では実力があれば埋れにくいため、活躍した分はきっちりと給与に反映され、結果的に大企業にいるより高い待遇を受けているような人も多くいます。
2.事業が長期的に続く保証がない
大企業に比べると安定感がありません。日本の大企業は、世界でもある程度のシェアを握っているような会社が多く、経営資源も豊富です。
しかし、最近はそんな日本の大企業神話も終焉を迎えてきています。
どんな会社も潰れる可能性がある不安定な時代に突入することは明白であるため、会社に安定を求めるのではなく、自分の実力を磨いて「不安定の中で安定する力」をつける方がいいように思います。
大企業に比べ、中小企業には実力がつけやすい環境があります。一概に大企業で働く方が安定しているといは言えないというのが個人的な見解です。
3.社内教育・制度が乏しい
大企業は丁寧な社内教育制度が整備されているところがほとんどです。しかし、中小企業の中には研修や社員教育にコストを割けない企業もあります。
チョロっと説明しただけで、いきなり実践に放り込まれる会社も多い。
僕が働いた会社は、運良く研修に力を入れている会社だったため、このへんで苦労した経験はありませんが・・・。
未経験で別の業界に入る場合、この部分を確認しないと苦労することになる。
4.人間関係が悪化すると影響が大きい
数十人程度の規模の会社で人間関係が悪化すると大惨事です(笑)
大企業なら一時的に我慢すれば、部署異動などで解決することもあります。
それが人数の少ない中小企業では、辞めない限り苦手な相手と毎日顔を合わせないといけないことになる。
実際、仕事のストレスの9割以上が人間関係だといわれていますね。個人的にはこれが一番のデメリットかなーと思います。
5.企業格差が大きい(ピンからキリまで)
中小企業と一括りに呼んでいますが、会社ごとに環境が違います。上場している大企業以上にバラエティに幅がある。
上場企業は、どの会社も社内制度などは一定水準はありますが、中小企業は基準がないためピンキリの差が激しい。
良いところは「え、ここは楽園?」というほど良いのに対して、劣悪すぎる環境があるところもある。
そこは、就職・転職する前に自分で見極めなければなりません。
個人的にはある程度コントロールできるリスクだと思っています。
まとめ
簡単にまとめると、中小企業は大企業と違って安定性が低く・整備された制度がない代わりに、場数が踏めて裁量や工夫の余地が大きいチャンスがあるということです。
仕事場に求める環境は人それぞれですが、僕は中小企業の方が自分の裁量を活かすことができて働きやすいと感じます。