サラリーマンの悲哀を5・7・5の川柳に乗せて歌う「サラリーマン川柳」が好きです。
サラリーマン川柳は、第一生命保険が運営する一般公募のコンクールで、1987年から毎年開催されている人気企画です。
日常に起こる出来事をユーモアと風刺のセンスで歌う川柳の数々には、哀愁溢れるサラリーマンの姿が浮かび上がり、素晴らしくクリエイティブだと感じます。
笑えたり、あるあると納得してしまう作品がたくさんあります。今回は、その中からいくつか拾い上げます。
サラリーマンの琴線に触れる川柳の数々
コストダウン 叫ぶあんたが コスト高
読んだ人各々で具体的な上司の姿が浮かび上がるような川柳。コスト高な上司との上手い付き合い方を身につけることは、社会人として生き抜くための技術ですが、この川柳のように、ユーモアを交えて捉えると大きな心で接することができるかもしれません。
やられたら やりかえせるの ドラマだけ
これがリアルです。「倍返しだ!」を合言葉に、陰険な上司を次々にやっつけていく銀行員が主人公の「半沢直樹」というドラマが流行りましたが、現実はああはいかない。やられても耐え、上手く流すということこそがリアルなサラリーマンの姿。
慰労会 会社でやれば 疲労会
20代のサラリーマンには共感の川柳ではないかと思います。下っ端にとって会社関係の飲み会はただの仕事ですよね。泥酔し同じ話をする上司の話を頷きながら聞き、先輩のグラスが空けばすぐに注ぎ足し、どのタイミングで締めようか、お会計はどうなっているか、なんてことを考えながらお酒を飲まなければいけませんからね。
うちの嫁 後ろ姿は フナッシー
時間の恐ろさを感じます。社会の荒波の中で、家庭を守るためにちょっとやそっとじゃ転ばないように適応した結果の形状変化なのでしょうか。幸せの中の哀愁を表現した秀逸な川柳。
会社でも 家でも食べてる 冷や飯を
家族のために一生懸命働いているにも関わらず、妻や娘に邪険に扱われているサラリーマンお父さんの姿がありありと浮かびます。
電話口 「何様ですか?」と 聞く新人
毎年4月は、多くの会社で新人が新しい伝説を生みだす季節。新人の初々しさと周りの先輩の焦りが春を感じさせてくれる川柳です。
オレの部下 半沢みたいな 奴ばかり
何倍返しにされるんでしょうか。鬱まっしぐら。怖くて簡単な頼みごとすらできそうにない。この川柳の作成者が次の人事異動まで生き延びることをただただ祈ります。
休みより 心落ち着く 出勤日
共感する人も多そうな川柳。家に居るのが辛いことが功を奏して、働きまくった結果、ガンガン出世している先輩がいます。失うものあればえるものもある諸侯無情を詠っています。
わんこより 安い飯代 ワンコイン
たまらない哀愁。社畜がペットの犬より待遇が悪いことに気づかせられます。
いくつかピックアップしましたが、共感できるものもあったのではないでしょうか?
サラリーマン川柳が素晴らしいと感じるのは、自虐的な哀愁ただよう表現の中に、毎日一生懸命働く大人達の強さが垣間見得るからだと思います。
自分で自分を笑える強さ。厚みのある強さというか。読むと元気がもらえます。
他の作品もネット上で読むことができます。